興味深い記事があります。
ロイター通信の記事と、日経「エコマム」の記事です。
アルゼンチンの首都ブエノスアイレス最大の精神科病院で、
哀愁のあるアコーディオンの旋律に合わせ、
患者が医師や看護師とタンゴを踊っている。
イタリアやオーストラリアなど、アルゼンチンから遠く離れた国々でも、
様々な治療にタンゴを利用する「タンゴセラピー」が広がっている。
ワシントン大学メディカルスクールの研究では、
パーキンソン病の患者がタンゴを習うことで、
体のバランスを取りにくくなる症状が改善されたことが分かった。
英国ではタンゴの複雑なステップが、
アルツハイマー型認知症患者の記憶力向上に使われている。
またイタリアでは、
体を密着させ後ろに移動する動きにパートナーへの信頼が必要になるとして、
夫婦間のカウンセリングに用いられている。
ウェールズに拠点を置く
タンゴセラピーの国際団体で代表を務めるMartin
Sotelano氏は、
「タンゴの利点は、患者によって踊りのスタイルを変えられることだ」と説明。
「夫婦のカウンセリングではコミュニケーションを重視し、
アルツハイマー型認知症の治療では基本の8つのステップに重きを置く。
パーキンソン病の患者には、洗練されたしっかりとした動きを練習することが役に立つ」と話した。
(ロイター通信)
タンゴセラピーと呼ばれるクラスでは
男女の役割を交代させる、つまり女性が男性のリード役を、男性が女性の受身役も行います。
このロールプレイはカウンセリングにも活用されているように
共感的理解を得やすくし、
合意形成や他者受容などの能力を高めるといわれています。
タンゴを踊ることで家族を、友達を、
自分自身を思いやる大切さを思い出したという人も多いようです。
(中略)
旗目に見る複雑なステップからは意外かもしれないですが
「タンゴはパウサ(一時静止)を楽しみきるもの」といわれ、
走り続ける私たちの日常生活に「一時停止」の重要さを思い出させてくれる役目も果たしてくれます。
(日経「エコマム」スペシャルリポート・体と心と脳をいやすタンゴセラピー)
音楽に耳を傾け、無心になっている状態の中でさえ、
リードとフォローの「駆け引き」のような感覚があります。
型にはまらないゲーム性≠ェタンゴの魅力ではないかと思います。
リードとフォローの力関係が、しっかりとなじんだとき、
タンゴ好きの方がよく使う言葉 ― 気持ちいい ― が起こるといいます。
野球で言う、ホームランかも知れません。
いずれにしても、何かと何かの関係をうまくつなげられたとき、
ある種の達成感のようなものが感じられます。
無心に体を動かし、ゲームを楽しみながら、心も脳もリセットできる。
これがタンゴの面白さなのかもしれません。